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読書を楽しむ「アーサー・ミラー短編小説集 存在感のある人」

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85歳を過ぎて仕上げた物語。

幼少期を過ごした海辺の町に妻と共に滞在した夫は
妻に「女を充分に喜ばせていない」と朝方非難され
海岸通りに向かって歩いて行った

海辺に下る公道を捜し見つけたが海を見て立ち止まった。
こどもの頃、海で溺れそうになったことがあった。
遊歩道に下りたときに黒いTシャツを着た男がセックスをしていた。
女のほうは砂と草の小山に隠れて見えない。
浜辺に下りる道がほかになく、一度海岸通りに戻り待った。
再度、浜辺に向かったが、セックスは続いていた。

しばらく散歩して戻ったら遊歩道の脇で男は寝袋にくるまっていた。
女は波の縁のところにいて海を見つめていたが男のところに戻った。

カップルを見ながら、ふたりのことをああでもないこうでもないと
勝手に想像した。
女と目が合い、女が近づいてきて時間を聞いた。それからしゃべった。
女が「わたしたちのこと見たでしょ」といった。
言い訳をしたが女は気づいていた。
一度戻ったことも知っていた。
「あなたがいるって感じがしました」
「どういう意味ですか?」
「存在感のある人っているんですよ」

女は海の中に入っていった。彼も海の中に入っていくことにした。
女が彼に近づいてキスした。
そして、砂浜を歩いて恋人のところに戻った。

海水浴で睡魔に襲われ目を閉じた。
ふたりともいなくなっていた。
四方を見回したが海と人気のない砂浜しかなかった。

彼は自分が見たものによって幸福な気持ちになれた。
カップルが本当にいたかどうかは問題ではなかった。

彼の体験を目を閉じて描いてみれば読者でも幸福な気持ちになれると
作者が言っている気がする。そういうことだ。
だからそこに存在感があると言いたいのだろうと思う。


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